様々な新しいデバイスが登場する中で、グーグルグラスほど論争の的になったテクノロジーはこれまで無かったと言えるだろう。6月に発売が開始された英国でも、さっそく映画館業界が館内での着用禁止を宣言。一部のメディアからは「プライバシーを吸い取るサイボーグツール」といったヒステリックな反応も招いている。

そんな中、ニュースサイトTom’s guideが掲載した、グーグルグラスのPR責任者、クリス・デイル氏へのインタビュー記事が注目を集めている。「ユーザーからのフィードバックを活かしつつ、グーグルグラスは間違いなく良いプロダクトへと成長している」と、自信に満ちて語るクリス氏の発言を、ここでは一部要約しつつお伝えしたい。
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――グーグルグラスからアンドロイドウェアへ。グーグルは何故こんなにもウェアラブルテクノロジーにエキサイトしているんでしょうか?

コンピューターの歴史を振り返ってみると、初期の段階では1個のパーソナルコンピューターが、1人の個人に向けてデザインされていた。それが、ここ10年ほどの間に、3インチや4インチの電話に、そして7インチや8インチのタブレット向けに、といった具合に、デバイスごとに最適化する流れが進んできた。テクノロジーを個人の生活の場面ごとに、最適化する流れが進んだんだ。

現状ではまだ、我々のリアルな暮らしと、デジタルの間には溝があるが、ウェアラブルはその溝を埋める役割を果たす。ウェアラブルの進化によって、デジタルの世界がリアルな暮らしに寄り添う形に発展するんだ。

――スマートフォンやタブレットに置き換わる存在を生み出すということですか?

長いスパンで考えた場合、ウェアラブルは我々の暮らしを劇的に変化させる。最近は驚くほど多くの人が、スマートフォンを見ながら街を歩いている。そんな行動は、ここ10年ぐらいかかって浸透したので、今では誰も奇妙なこととは考えないけれど、それがもはや当たり前になった。しかし、今のスマートフォンやタブレットが、最適な形だとは言えないだろう。それを変えていくのがウェアラブルの使命だ。

――初期のグラスエクスプローラー・プログラムは招待を受けた人しかグラスを購入することが出来ませんでした。何故そのような方法をとったのですか?

グラスに関する取り組みがユニークなのは、我々が常に議論のど真ん中に、開発途上の製品をさらしてきた事だ。普通の会社の普通のプロダクトのように、2年や3年かけて磨き上げた製品を、新商品発表会で売り出すという方法は取らなかった。「さぁ、これが新しいテクノロジーです。みなさんでこれを使いこなしてみましょう」といった具合にはね。

その代わり、我々がやったのは、みんなが見ている前に、実験中のプロダクトを放り出したということだ。雑なやり方に見えるかもしれない。それがどういう結果を生むか予想もつかない。けれども、我々はユーザーからのフィードバックを製品に取り入れて、進化させる道を選んだんだ。しかも、単純にフィードバックを反映させるのではなく、我々のポリシーに沿うものに仕上げる形でね。

――グラスはプライバシーを侵害するといった批判も、一向に止みません。一般発売すらされていないのにグーグルグラスの使用禁止を宣言するような業界も存在しますが。

新しい技術は新しい議論を引き起こす。そして、そこから得られるメリットやデメリットを議論するのはとても大事なことだ。しかし、結局のところ人間の感じ方というのは歴史とともに変化する。1890年代にコダックがカメラを開発した時、公共の場での使用は禁止された。当時の人々も、自分たちの姿が許可なく撮影されることを不快だと感じたんだ。

――今後、グラスのデザインやバッテリーの持ちはどのように改善されますか?

部品やテクノロジーはより小さく、より優れたものに進化する。バッテリーの持ちも改善する。また、外見の印象も間違いなく変化する。現状では確かに、不格好に見えるという意見もあるが、数ヶ月や数年という時間の流れの中で、これらの問題は消え去っていく。20年、30年前と比べると変化の速度はずいぶん早くなっている。


グーグルグラスは「普通の会社の普通の製品ではない」と言い切るクリス氏の言葉に、改めてこの怪物じみたデバイスの凄みとその可能性を感じさせられた。先日はかつてのプロジェクト責任者、Babak Parviz氏がアマゾンへの移籍を表明。一部ではその混迷を懸念する声も聞かれるが、グラスプロジェクトがたゆみなくその歩みを進めていることは確かと言えそうだ。(Google Glass Info)

Google’s Chris Dale Discusses Future of Google Glass(Tom’s guide)

photo:Giuseppe Costantino(flickr)