グーグルグラスの未来に暗雲(Google Glass future clouded)と題した記事をロイターが配信した。
先日はtwitterがグラス向けアプリの開発を停止したことが報道されたが、ロイターの取材によると「グラス向けアプリを開発していた16社中9社が現在、開発を停止。別の3社は消費者向けではなく業務用アプリへのシフトを切った」とのこと。
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記事では他にも、eBayでの中古落札相場が定価の二分の一程度まで下落していることや、グーグルグラスの開発を支援するファンド「Glass Collective」のサイトが密かに公開を停止していたことを指摘。グーグルグラスの一般向け発売は早くとも2015年にずれ込むことは確定的と思われる。
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密かに公開が停止された「Glass Collective」のサイト。VC大手、Andreessen Horowitzなどが提携していた

先日は米ボーイング社がグーグルグラスの業務利用を本格化させると宣言。KFCやタコベルを運営するYum! Brandsも従業員のトレーニング現場への採用を発表。医療関係のCrowdOptic社は今後100ヶ所の医療施設(現状は19ヶ所)にグラスを導入したいと述べるなど、業務利用に向けての動きが強まる一方で、一般消費者向けのリリースに関しては厳しい状況と言える。

グーグルグラスが一般ユーザーから支持を失いつつある現状については、10月上旬の時点でPCmagazineが「グーグルグラスよ、安らかに眠れ(Rest in Peace, Google Glass: 2012-2014)」 と題した記事を掲載。

eBayでの中古落札相場もその辺りを境に下落が始まった模様だ。9月上旬には1400ドル程度で落札されていた中古端末は10月中旬には1000ドルを切るケースも出現。現在の落札価格を調べてみると、700ドルを下回る価格で落札されたケースも確認できる。
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グラスが一般ユーザーからの支持を失った原因とされているのが、グーグルグラスの登場から二年を経てもなお、決定的なアプリが生み出されなかったこと。さらに、相次いだバグの発生(最悪の場合は端末の交換が必要)、そしてBubble Issue(泡吹き問題)と呼ばれるモニターのアルミ箔が湿度により、泡吹き状態になる現象などが挙げられる。
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編集部が所有するグラスも泡吹きトラブルに見舞われ、米国に返送して交換した

特にBubble Issueに関しては、今年の夏頃から「3台に1台の確率で交換が必要な不具合が発生している」との報告が開発者コミュニティであがり、日本国内でも「転売業社から購入したグラスを、どうやって交換に出せばいいのか分からない」といったユーザーの声も聞くようになった。

グーグル側としては「現状のグーグルグラスはあくまでも開発者バージョンであり、ユーザーからのフィードバックをもとに改善を重ねていく」との姿勢に変わりは無いが、ここに来てユーザー離れが顕在化したことは、プロジェクト全体にとって大きな痛手と言えるだろう。

かつてグーグルグラスの大ファンを公言していた米国の著名ブロガー、ロバート・スコーブル氏はこの現状をどう見ているのか。先月、22日時点でスコーブル氏にコメントを求めたところ、下記のような回答が返ってきた。
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"I don't wear them anymore. Too low value for the abuse you get."
私はもうグラスを着用していない。着用することで被る被害に比べ、得られるメリットが少なすぎる。

"Glass is doomed this year. Next year a complete redesign is coming. Until then this is just noise."
グーグルグラスは今年は失敗に終わった。来年には全く新しいデザインが登場する。それまでは、こういったノイズに悩まされる。

スコーブル氏が言う「全く新しいデザイン」が何を意味するのかは不明だが、業界に通じた氏の発言だけに、グーグルが何らかの次の手を用意していることは確かと思える。時間はかかるかもしれないが、グラスチームからの反撃を期待したい。(Google Glass Info)